電気工事で使う手袋の種類とそれぞれの特徴を徹底比較!

はじめて電路で作業する人にとって、絶縁手袋選びは意外と迷うポイントです。高圧用は全長や袖口形状、低圧用は厚みや指形状、さらに手袋を守る保護カバーまで選択肢が多くあります。本稿では、失敗しにくい選び方を「用途」と「装備の組み合わせ」から整理し、代表的な型番を例にわかりやすく解説します。

目次

高圧手袋は全長と袖口の形状で選ぶ

高圧用は形状の選定が作業のしやすさと防護範囲に直結します。袖口の設計(普通型/NU型)と全長(460mm/410mm)を、装備や動作に合わせて最適化すると選びやすくなります。

肘の屈曲に干渉しにくいNU型/広範囲を覆える普通型

絶縁手袋
NU型の袖口
普通型の袖口

NU型は袖口が肘側でえぐれた形状のため、腕の曲げ伸ばし時に干渉しにくく、姿勢変化が多い現場でも動きの邪魔を極力抑えます。普通型は袖口がフラットで、手首から前腕までの防護範囲を広く取りやすいのが持ち味。狭所で腕を大きく曲げる作業や頻繁な体勢変更があるならNU型、露出を確実に抑えたいなら普通型が有力候補になります。

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ポイントNU型普通型
動作のしやすさ屈曲時に干渉を抑えやすい作業者によっては肘に干渉する
防護の取り方動作優先で取り回し良好より広い防護範囲を確保

絶縁衣の有無で全長を使い分ける(460mm/410mm)

絶縁衣を併用しないなら、手袋単体で前腕まで守れる460mmが基本線。絶縁衣(ジャンパー型)を併用するなら、袖と手袋をしっかりラップできるため410mm(胴太型)でも合理的に運用できます。要点は「手袋単体で守るのか」「絶縁衣と重ねて守るのか」を先に決めること。現場で想定される危険度に合わせた装備品を選ぶことで、動きやすさと安全性の両立が図れます。なお、袖ラップを想定した胴太型にも460mmのタイプがあります。

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全長想定運用ポイント
460mm手袋単体運用前腕の露出を抑えやすい
410mm絶縁衣と重ねる運用袖ラップで隙間を作らない

なぜ高圧用ゴム手袋は「長い」のか?

長さは単に防護範囲を広く取る目的のほかにも、腕まわりの沿面距離を確保するために重要です。電気は通りやすい経路へ移行する性質があり、高電圧であるほど表面リーク(沿面放電)が起きやすくなります。全長の長い手袋を装着したり、手袋と絶縁衣の袖を深く重ねたりして距離を稼げば、素肌に至る表面経路が長くなり、リークやブリッジを起こしにくくなります。高圧ゴム手袋の長さは、沿面距離を安定的に確保して感電リスクを下げるための設計、というわけです。

低圧手袋は作業内容に応じて選ぶ

低圧用の絶縁手袋は、厚み・指形状・構造の違いが作業性と耐久性に直結します。細かい作業の比率や工具接触の多寡で選ぶと迷いません。

インナーを下履きしやすいスタンダードモデル

渡部工業の507・508は汗取り手袋(汗は感電対策上の大敵です)を下履きしやすい設計で、3サイズ展開。日常点検から一般作業まで幅広く対応でき、初導入でも扱いやすいモデルです。装着・脱着がスムーズで、在庫管理や配備運用のしやすさもメリットになります。

圧倒的なフィット感と作業性

505は507の約半分の厚みを狙った薄手タイプで、指も細身設計。配線の取り回し、小ねじ・端子の作業など指先のコントロールが求められる場面で力を発揮します。裏面はシボ加工でサラリとしており、汗をかいても脱ぎやすい点も特徴。薄手でも想定電圧帯での使用を前提に、作業性の優先度が高いユーザーに適した選択肢です。

二層構造で“守り”を強化

506は外側に保護カバー、内側に絶縁層を持つ二層式。後述する保護カバーが一体成型されているのがこのタイプです。鋭利エッジや部品のバリに触れやすい工程でも、外層が擦過や小傷を受け持つため内側の絶縁層を保護できるのが強みです。工具接触が多い現場や繰り返しの擦れが想定される作業、「カバーをしても作業性の損失を最小限に抑えたい」という要望にマッチします。

絶縁手袋だけでなく保護カバーもあると安心

保護カバーは「絶縁手袋を外傷から守る」ための補助装備です。優れた絶縁素材でも刺し傷や擦り傷、摩耗などにより絶縁性能が低下する恐れがあります。保護カバーを上履きすることで、物理的なダメージから絶縁手袋を守りましょう。保護カバーは、素材の特性差を理解して使い分けると、現場適応力が上がります。

※保護カバーは機械的保護が主目的で、電圧仕様を引き上げるものではありません。

作業性を重視するならPU一択

PU(ポリウレタン)製は薄手で絶縁手袋にフィットし、上から被せても作業性を損ねにくく、グリップ性にも優れます。品番734は背抜き&面ファスナーで着脱しやすい仕様、対して733は手の甲側まで保護範囲がおよぶため、想定しにくい損傷からも絶縁手袋を守ることができます。また、低圧用のPU製保護カバーもあります。

丈夫で保管管理が簡便な天然皮革製

天然皮革製の保護カバーは耐摩耗性に優れ、擦過が多い現場でも長持ちします。PUなど合成素材に比べて環境劣化(加水分解やベタつき)が起こりにくく、長期保管でも状態を保ちやすい点も実務上の利点です。荒めの部材を扱う工程や、保管期間が長くなりがちな現場に好適です。また、730はフリーサイズで、サイズが混在するチーム運用でも扱いやすく、配備しやすい選択肢です。

730高圧ゴム手袋用革カバー

厚みが均一で扱いやすい人工皮革製

人工皮革は天然素材ではないため、製造段階で厚みを均一にコントロールできます。面での当たりが安定し、装着感も一定に保ちやすいのが特徴。731は手の甲側まで覆うロング設計で、袖を引っ張って装着しやすいスリーブ仕様です。また、天然皮革製と同様に扱いのしやすさも利点と言えます。

731高圧ゴム手袋用ロングカバー

まとめ

高圧用の絶縁手袋は「袖口形状×全長」を作業環境に合わせて選び、適切な防護範囲を確保するのが肝要。低圧は作業性と耐久の優先度で、標準(507/508)・薄手(505)・二層(506)を使い分けるとよいでしょう。

さらにPU・天然皮革・人工皮革の各カバーを状況に応じて重ねることで、手袋本体の保護と作業効率の両立が可能です。まずは自分の作業シーンを具体化し、必要機能の優先順位を決めて候補を絞り込みましょう。

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