【電圧別】太陽光パネル工事・点検に使える絶縁手袋の種類と選び方

太陽光パネルの工事や定期点検では、作業に応じて異なる電圧の電気を扱います。そのため、電圧レベルに合った絶縁手袋を選ぶことが、安全確保と法令遵守の上で極めて重要です。万一の感電リスクを防ぐには、なぜ専用の手袋が必要なのか、そして太陽光設備の電圧区分ごとにどのような手袋を選べば良いのかを解説します。本記事では、電圧別の絶縁手袋の種類と選び方を専門業者向けにわかりやすくまとめました。

目次

太陽光発電メンテナンスでなぜ絶縁手袋が必要なのか

太陽光発電設備のメンテナンスでは、作業者の感電事故を防ぐために絶縁手袋の着用が欠かせません。高所や屋外での電気作業でも、適切な絶縁用ゴム手袋を身につけることで、充電部への不用意な接触による事故を未然に防止できます。

電気設備への接触リスクを最小限にする保護対策

絶縁手袋は作業者の身体を電気から守るために最重要の保護具です。感電事故は一瞬の不注意で発生することが多く、特に電気設備の点検や工事中に誤って充電部に触れてしまえば、電流が人体に流れて重大な被害につながります。そのため労働安全衛生規則でも、高圧・低圧の活線作業時には絶縁手袋などの保護具使用が義務付けられており、たとえ低い電圧でも油断は禁物です。絶縁手袋を正しく装着することで、万が一充電部に触れてしまった場合にも電気が直接人体に流れるのを防ぎ、感電リスクを最小限に抑えることができます。

高所・屋外作業では偶発的接触のリスクが高い

太陽光パネルは屋根上や野立て架台など高所・屋外に設置されるため、作業環境が不安定になりがちです。強い日差しや風の影響下で姿勢を崩したり、注意が散漫になった瞬間に、露出した電線や端子へ手が触れてしまう恐れがあります。実際、電気工事では感電事故と墜落事故が二大リスクと言われ、高所作業ではわずかなミスが大事故につながりかねません。こうした偶発的な接触による感電から身を守るためにも、絶縁手袋を着用しておくことが不可欠です。万一の際にも絶縁手袋が最後のバリアとなり、安全確保に大きく貢献します。

太陽光設備における代表的な電圧区分

太陽光発電システムは扱う電圧によって、大きく「低圧」「中圧」「高圧」の区分に分かれます。パネル周辺の直流低電圧から、接続箱・パワコン周りの中電圧、そして高圧受電設備に至るまで、区分ごとに適切な絶縁手袋を選ぶ必要があります。

スクロールできます
系統区分電圧帯想定電圧
(目安)
JISクラス渡部工業製品例主な用途
設備例
DC(直流)低圧~300VJ00507パネル・ストリング回路の点検・接続確認
DC(直流)中圧~1500VJ01520接続箱・集電盤のメンテナンス
AC(交流)低圧~600VJ0508小規模商業施設・PCS出力側配線作業
AC(交流)高圧~7000VJ1530高圧受電盤・キュービクル内の点検保守

※本記事の内容は一般的な電圧区分と絶縁手袋の対応例を示したものです。実際に使用する際は、設備ごとの電路構成や定格電圧を必ず確認し、適正なクラスの手袋を選定してください。誤った区分での使用は、感電や事故の原因となるおそれがあります。

パネル周辺(直流)は300V以下~600V前後で運用されるケースが多い

太陽光パネルから接続箱までの直流回路は、一般に300V~600V前後の低圧領域で設計されています。住宅用システムでは300V以下の構成が多く、ストリング開放電圧が300Vを超えない範囲で制御されています。一方、事業用設備ではストリングを多段に直列接続するため、開放電圧が500~600V程度に達するケースもあります。

これらはJIS T8112で定める クラスJ00(交流300V/直流300V以下)またはJ0(交流600V/直流750V以下) の使用範囲に該当します。したがって、住宅用・小規模設備ではJ00相当の低圧手袋、事業用・600V級設備ではJ0相当の手袋を使い分けるのが安全です

接続箱やPCS以降の設備では1000Vを超えるケースも

直流接続箱やパワーコンディショナ(PCS)以降の回路では、システム規模によっては電圧が1000Vを超える中圧帯となる場合があります。大規模なメガソーラーなどでは、発電効率向上のためストリング電圧を1000〜1500V程度に高める設計も一般化しており、その結果、接続箱で扱う直流やPCS出力後の交流電圧が従来より高くなる傾向です。実際、直流1500V対応の接続箱・機器も普及し、600V級を上回る高電圧で運用されるケースが増えてきました。したがって、接続箱や集電盤周りでは1000V超の電圧にも対応できる絶縁手袋を選定し、安全マージンを確保する必要があります。

高圧受電設備(キュービクル)ではJIS T8112区分J1を検討

事業用の太陽光設備では、高圧受電用キュービクルを経由して系統連系するケースもあります。キュービクル内は交流6.6kVなど数千ボルト級の高圧電路となるため、ここで作業を行うにはJIS T8112が定めるクラスJ1(最大使用電圧7,000Vまで)の絶縁手袋が必要です。国内規格上、J1が使用電圧の上限クラスであり、これを超える特別高圧領域に対応した手袋は存在しません。そのためキュービクル内の点検・保守では、高圧活線作業用手袋を用いて作業者の安全を確保します。

電圧別・用途別に見る絶縁手袋の選び方

以上の電圧区分ごとに、どの種類の絶縁手袋を選べば良いかを具体的に見ていきましょう。扱う電路の電圧レベルと作業内容に応じて適切な手袋を選定し、安全な太陽光メンテナンスに役立ててください。

300V以下のパネル回路点検にはJ00クラス(507型など)を選ぼう

太陽光パネルのストリング電圧が300V以下の現場では、JIS T8112で定めるクラスJ00(最大使用電圧:交流300V/直流300V以下)の絶縁手袋が適しています。渡部工業の「507型」はこのクラスに該当する低圧用ゴム手袋で、一般住宅や小規模設備の直流回路点検に最適です。柔軟で装着しやすく、汗取り用のインナー手袋を重ねても快適に使える設計です。細かい作業を重視する場合は、さらに薄手で操作性に優れる「505型」を選ぶのもおすすめです。

一方、600V級の交流回路では、J00ではなくクラスJ0(例:508型)以上の絶縁手袋を使用する必要があります。作業前には必ず設備の電圧を確認し、クラス適合範囲内の手袋を選定してください。

1,000V前後の接続箱には中電圧向けの絶縁手袋を

接続箱や直流集電盤など、1,000V前後の電圧がかかる箇所で作業を行う場合は、それに対応した絶縁手袋を選びましょう。例えば渡部工業の「中圧ゴム手袋520型(グリーンタイプ)」は、ソーラーパネルのメンテナンス用途で使用されることの多い中圧用手袋で、3,500Vまでの電路に対応するモデルです。接続箱周りの活線作業では、安全マージンを確保できる絶縁手袋を選択し、確実な感電防止策としましょう。

520中圧ゴム手袋(グリーンタイプ)

キュービクル作業には高圧用530(定格7000V)を使用

高圧受電キュービクル内での点検・工事には、必ず高圧用の絶縁手袋を使用してください。例えば渡部工業の「530 高圧ゴム手袋(普通型)」や「540 高圧ゴム手袋(NU型)」はJIS T8112クラスJ1に適合した製品で、最大使用電圧7,000Vに対応し20,000Vでの耐電圧試験にも合格しています。530型は全長46cmと袖口までカバーできる長さを持ち、腕の露出部分を減らすことで表面放電やアークによるリスクも低減します。高圧領域での作業は法律上も絶縁用保護具の着用が義務付けられているため、キュービクル内での点検作業では必ずこの種の高圧対応手袋を正しく装着して作業を行いましょう。

【まとめ】電圧帯と現場環境に合わせた絶縁手袋選びを

太陽光発電設備は構成要素によって扱う電圧が大きく異なります。そのため、電圧区分に応じた絶縁手袋を選定することが安全対策の基本です。

300V以下の直流パネル回路ではクラスJ00に相当する「507型」などが適しています。600V級の交流回路やPCS(パワーコンディショナ)出力周辺では、クラスJ0に該当する「508型」を使用してください。さらに、1000~1500Vクラスの直流集電盤や中圧設備では「520型」、6.6kV級の高圧受電設備(キュービクル等)ではクラスJ1に適合した「530型」が推奨されます。いずれの場合も、実際の設備電圧を確認し、JIS T8112で定められたクラス範囲内で手袋を選ぶことが重要です。

また、絶縁手袋は「入口対策」にあたる保護具であり、出口側の絶縁長靴や設備側の絶縁シートと併用することで、より万全な安全体制を構築できます。電圧帯を正しく理解し、適正な保護具を組み合わせて、安全かつ確実な太陽光メンテナンスを実現しましょう。

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