高圧用長靴って普通の長靴と何が違う?電気用と一般作業用の違いを解説

高圧での電気作業には専用の高圧用長靴(絶縁長靴)の着用が不可欠です。見た目は普通の長靴に似ていますが、実は絶縁性能や素材において大きな違いがあります。万一感電事故が起きれば命に関わるため、足元の保護具選びは非常に重要です。この記事では、絶縁長靴と一般作業用長靴の相違点を詳しく解説し、安全な作業のための靴選びのポイントを紹介します。違いを知れば、高圧現場でどの長靴を選ぶべきかが明確になるでしょう。

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高圧用長靴は出荷前に20kV1分間の耐電圧試験をクリアしている

高圧用長靴は出荷前に20kV1分間の耐電圧試験が行われ、合格した製品だけが出荷されます。一方、一般作業用や雨天用の長靴は、こうした耐圧試験は行われていないため、高電圧からの保護用として用いるべきではありません。

絶縁検査をしていない一般作業用長靴での作業はリスクだらけ

一般的なゴム長靴にも多少の絶縁性は期待できますが、そもそも電気用の安全基準を満たすことを目的に作られていません。例えば、雨用長靴としての検査はしていても、電気用長靴としての検査はまったくしていません。つまり、感電を防止できるか否かは運しだい、という言い方ができてしまいます。実際に身体の一部分が充電電路に触れてしまったとき、長靴が作業者の身体を本当に守ってくれるかどうかはまったくわからないのです。

例えば、渡部工業製の高圧用ゴム長靴は使用電圧7,000V以下に対応しており、20kVで1分間の耐電試験をクリアした製品だけが出荷されています。こうした製品であれば、高電圧の電路に身体が触れたとしても、アース側に流れようとする電気の経路をシャットダウンできます。

高圧用長靴は極上の天然ゴム素材のみを使用

高圧用の絶縁長靴は、その素材にも特徴があります。絶縁性の高い天然ゴムだけを原料に使用し、内側にも布やウレタンなどの素材を一切使っていません。すべてゴムで構成することで、靴全体の絶縁性能を高く維持しています。なお、一般的な長靴で見られる布裏地やクッション材も、高圧用では絶縁性能を優先して排除されています。

高圧用の絶縁長靴に布裏地やウレタン系クッション張りができない理由

一般用長靴では内側に布やウレタン素材を使って履き心地を高めていますが、高圧用絶縁長靴ではこれらが使用されません。その理由は2つあります。

  • 導電リスク:布は濡れて水分を含むと電気を通しやすくなります。絶縁長靴の内側に布裏地があると、汗や水で湿ったときに感電の危険性が増します。
  • 劣化の問題:発泡ウレタンなどの内張り素材は、長靴内部に水を満たして行う耐電圧試験によって、素材の劣化を招く恐れがあります。そのため、快適性を追求するような加工は施されていません。

上記のような理由で、高圧用長靴は内側までゴムだけで作られています。原料に使われる天然ゴムは、純度の高い最上級グレードのゴムだけが使われます。布やウレタンがない分、一般品よりムレやすいですが、安全を優先するためにはやむを得ない仕様です。

高圧用長靴(先芯入り)のつま先には非金属のFRP先芯を採用

242電気用ゴム長靴(先芯入り)

高圧用の電気用長靴には、先芯(つま先の保護芯)に金属ではなくFRP(繊維強化プラスチック)製のものを採用したモデルがあります。鉄製の先芯は衝撃には強いものの電気を通すため、電気用では避けられています。FRP製先芯なら絶縁性を損なうことなく、安全靴としてのつま先保護も両立できます。

万が一にも感電事故を起こさせない絶縁保護具メーカーとしてのものづくり

一般的な安全長靴では、足先の保護のために鋼鉄製の先芯が使われることがあります。鋼製先芯は頑丈でつま先を守れますが、電気を通す金属である点が電気作業の環境では問題です。絶縁長靴であっても金属先芯を使用していれば、たとえゴムで覆われていても万が一露出したり水を介して足に触れると感電の危険があります。そこで、高圧用では非金属のFRP先芯が用いられます。FRPは電気を通さない素材のため、万が一の場合でも感電リスクを大幅に低減させることが可能です。

実際、ゴムの表面が内外面から剥離し、中の先芯が露出しても作業を続けるということは想定しにくい場面です。しかし、絶縁用品である以上導電物を製品に使用することは極力避けるべきである、というのがメーカーとしての設計思想です

まとめ

最後に、高圧用(電気用)長靴と一般的な作業用長靴の主な違いを以下にまとめます。

項目高圧用長靴(電気用)一般作業用長靴
絶縁性能出荷前に20kV/1分の耐電試験を実施。高電圧への絶縁性能が保証されているテストなし。高電圧に対する絶縁性能は不明で保証されない
素材天然ゴムのみ(裏地なし)。電気を通す恐れのある布やウレタンは使用しないゴム・PVC製が多い。快適性のため布裏地やクッション材を使用する製品も
先芯(つま先)FRP製先芯のモデルあり(非金属素材で感電リスク低減)鋼製先芯入りが一般的(強度は高いが金属のため露出時に感電の恐れ)

電気作業の現場では、絶縁性能が保証された電気用長靴を必ず選ぶことが重要です。普通の長靴では感電リスクを防ぎきれず、重大事故につながる恐れがあります。絶縁長靴は多少重くムレやすい面もありますが、安全には代えられません。使用時は靴に傷や劣化がないか確認し、定期的な耐電検査を行って常に万全の状態を保ちましょう。

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