「絶縁用保護具」と「絶縁用防具」の違い、実はよく分からない……何度調べてもごっちゃになってしまう。そんな経験はありませんか? 本記事では、この2つの違いをスッキリ整理します。さらに、紛らわしい「防護具」との違いも解説。安全対策に迷わないためのポイントをまとめて確認しましょう。
絶縁用保護具と絶縁用防具は何が違う?まずは定義を正しく理解しよう
「絶縁用保護具」と「絶縁用防具」は、どちらも感電事故を防ぐための重要な安全装備ですが、その定義と用途はまったく異なります。まずは混同しやすい2つの違いを明確に整理し、安全知識の基礎を固めましょう。
「保護具」は人が身につける装備、「防具」は設備に取り付ける装置

両者の違いは用途と対象にあります。保護具は作業員が身につけて感電から身を守る装備であり、一方で防具は露出した充電部に取り付けて感電事故を防ぐカバー類です。RPGなどでは防具=鎧や盾など人が装備するものですが、電気作業における日本の法令上は、「防具」は人ではなく設備に取り付けるものを指します。
| 種類 | 役割・用途 | 例 |
|---|---|---|
| 絶縁用保護具 | 作業者が身につけて感電から身を守る装備 | 絶縁用ゴム手袋、絶縁長靴、絶縁衣など |
| 絶縁用防具 | 設備の充電部に取り付けて感電事故を防ぐ装置 | 絶縁シート、ゴムシールド管、機器カバーなど |
このように、「保護具」は人が身につけるもの、「防具」は設備に取り付けるものと覚えておきましょう。
安全確保のためには保護具・防具の併用が不可欠
感電事故を確実に防ぐには、絶縁用保護具と防具の両方を使用することが欠かせません。お互いの弱点を補い合うことで、二重の安全策となるからです。
- 保護具だけしか使わない場合:周囲の充電部に防具を装着しないままだと、作業中にうっかり腕や身体が露出部分に触れてしまう危険が残ります。
- 防具だけに頼る場合:自分自身が絶縁保護されていなければ、防具の付け外し作業時などに不意の接触で感電するリスクがあります。
- 両方併用すれば:保護具で作業者自身を守りつつ、防具で周囲の帯電部をカバーできます。万一どちらか一方に不備があっても、もう片方がバックアップとなり安全を確保できます。
このように二重防護することで、より確実に感電事故を防止できるのです。
絶縁用保護具とは?作業者を直接守るための基本装備
感電リスクが潜む現場では、作業者自身を守る「絶縁用保護具」の着用が必須です。ここでは、代表的な保護具の種類とその役割、製品選びで気をつけるポイントについて詳しく解説していきます。
手袋・長靴・上衣など、感電リスクから身体を守るアイテム
絶縁用保護具とは、作業者が身に着けて感電リスクから身体を守るための装備です。主な例を以下に挙げます。
- 絶縁用ゴム手袋:作業中に手指へ電流が流れないよう保護する基本アイテム。扱う電圧に応じて高圧用・中圧用・低圧用に大別され、渡部工業でも高圧用から薄手の低圧用まで各種モデルを揃えています。
- 絶縁ゴム長靴:足元から地面への漏電経路を断つ長靴。先端に安全つま先(先芯)を備えたタイプもあり、感電防止とつま先保護を両立します。
- 絶縁衣(上着・ズボン):上半身や下半身を覆う耐電用の作業着。電気を通しにくい軟質樹脂で作られており、誤って身体が充電部に触れても感電しにくく、高圧用と低圧用に区分されています。
着用義務や製品選びで押さえるべきポイント
絶縁用保護具は活線作業時に着用が義務付けられる重要な安全装備です。ではどんな製品を選び、どう使えばよいのでしょうか。ポイントを整理します。
- 規格・対応電圧の確認:自分の作業電圧に適合するか(製品表示の対応電圧が十分か)確認することが何より重要です。
- 検定取得の有無:交流300Vもしくは直流750Vを超える電圧帯で使用する場合、必ず厚生労働省の型式検定に合格した製品を選びましょう。
- 日常点検と定期検査:使用前後に亀裂や硬化がないか点検する習慣をつけます。特にゴム製品は時間とともに劣化します。型式検定品は6ヶ月ごとに一度、絶縁性能の試験(定期自主検査)を必ず受けましょう。
これらのポイントを踏まえて適切に保護具を選び、正しく着用することで、現場の安全性は格段に向上します。
絶縁用防具とは?作業対象の充電部に設置して事故を防ぐ装置
作業中、露出した充電部に不用意に触れてしまうことは重大な事故に直結します。そうした危険を未然に防ぐため、設備側に取り付ける「絶縁用防具」の役割と選定基準を見ていきましょう。
絶縁シートやゴムシールド管など、充電部への接触を防止する道具
絶縁用防具とは、活線部やその近くに取り付けて作業者が誤って触れないようにするための絶縁具です。感電だけでなく、金属工具の落下などによる短絡事故も防ぐ目的があります。代表的な防具には次のようなものがあります。
- 絶縁シート:ゴムや樹脂製のシート状カバーで、開閉器や母線など広い面を覆うのに用います。
- 絶縁カバー:開閉器の端子や変圧器の一次導体など露出部分を個別に覆います。
- 絶縁管(ラインホース):筒状のゴム製カバーで、主に電線の防護に用います。
作業環境に応じた適切な防具の選定が安全性を左右する
防具は作業環境に合った種類とサイズをびましょう。例えば屋内の受電キュービクル内での作業では、限られたスペースを効率良く覆える柔軟な絶縁シートが有効です。一方、屋外の架空配電線の近くでの作業では、ゴムシールド管で広範囲をガードする必要があります。また、作業中も内部の計器類を視認したい場合には、渡部工業の「低圧透明シート」のように中が見えるシートを選ぶといった工夫も有用です。

-300x225.jpg)

「防具」と「防護具」の違いとは?混同による誤使用に要注意


「防具」に似た名称で「防護具」というものがあります。一見似た名前を持ちますが、用途も設計目的も防具とはまったく異なります。
防護具は建設工事などの支障対策用で、活線近接作業には使えない
「絶縁用防護具」は、主に建設工事など電気以外の作業で電線等が支障となる場合に、一時的に電線を覆って災害を防止するための器具です。例えば建物の外壁工事で足場が配電線の近くを通る際、施工業者が電力会社と協議の上で電線に装着する樹脂製の防護管やジャバラ管などがこれに該当します。
重要なのは、防護具はあくまで第三者による作業で電線等に物理的接触を避けるための措置であり、電気の専門作業における安全策(絶縁用防具)とは目的も性能も異なる点です。したがって活線近接作業(電気工事士などが電路に近接して行う作業)の場面で、防護具を代用してはなりません。
まとめ
絶縁用保護具・防具・防護具の違いと正しい使い分けについて整理しました。それぞれの役割を理解し、作業環境に応じて適切に選択・使用することが、安全確保の鍵です。保護具で作業者自身を守り、防具で周囲の充電部を覆うことで、万全の対策を整えましょう。これで「保護具と防具の違いが分からない…」と迷うことなく、安全第一で作業に臨めるはずです。








