感電事故を防ぐには絶縁用の保護具・防具が欠かせません。絶縁手袋は絶縁用保護具の代表ですが、実は電気作業の安全性を高めるには、「設備側」を絶縁する防具である絶縁シートの活用が重要です。本記事では、絶縁シートがなぜ必要なのか、その役割と種類、選び方についてわかりやすく解説します。
絶縁シートとは?感電対策に欠かせない「充電電路側」の防具

絶縁シートとは、高圧・低圧の電気設備や作業環境で感電を防ぐために使用されるシート状の防具です。絶縁手袋や絶縁長靴といった身につける保護具に対し、絶縁シートは設備や作業箇所を覆って電気を遮断する「充電電路側」の防具に分類されます。高い絶縁性能を持ち、配電盤、電線などに被せたり巻き付けたりして使用します。
絶縁手袋だけでは不十分な理由とは
絶縁手袋だけを着用していても、電気作業中のすべてのリスクをカバーできるわけではありません。手は保護されても、たとえば足元や肘・膝など露出している他の部位が誤って活線部分に触れてしまった場合、感電の危険があります。また、工具を落としてしまい、金属部分が配線に接触してショートを引き起こすアクシデントも起こり得ます。絶縁シートを併用することで、身体以外の接触面も絶縁し、こうした想定外の経路で電流が流れるリスクを減らすことができます。
接触面を絶縁して安全性を高める役割
絶縁シートの役割は、作業者の周囲にある接触面を絶縁することで安全性を高めることです。例えば配電盤内部や電線上にシートを被せておけば、不用意に触れてしまった際の直接接触を防ぐ効果もあります。さらに、工具の落下による短絡(ショート)を防止する役割も果たします。絶縁手袋や長靴による作業者の絶縁防護と絶縁シートによる設備側の絶縁という二重対策により、感電リスクを大幅に減らせるのです。
電圧別に見る絶縁シートの種類と特徴
絶縁シートは使用する電圧によっていくつかの種類があり、それぞれ構造や特長が異なります。作業する電圧に適したシートを選ぶことで、十分な絶縁性能と扱いやすさを両立できます。ここでは、高圧用から低圧用まで主な種類とその特徴を見ていきましょう。
高圧用絶縁シートには多層式と二層式がある


高圧(数千ボルト級)の活線作業向け絶縁シートには、大きく分けて多層構造タイプの「高圧ポリフロシキ」と二層構造の「防護シート」があります。多層式は表層シートに基布(繊維シート)を挟み込み、引張りや破れに強く耐久性に優れるのが特徴です。一方、二層式は層構造を簡略化することで軽量化を図ると同時に、多層式の「内層の劣化を外観検査で発見できない」という欠点を補っています。
渡部工業では高圧用絶縁シートとして、多層式の「高圧用ポリフロシキ」と、二層式の「防護シート」を展開しており、用途や作業環境に応じて選べます。


600V以下用の絶縁シートは扱いやすさが魅力
低圧(交流600V以下)の現場で使われる絶縁シートは、扱いやすさを重視した単層構造が主流です。多くはPVC(塩化ビニル)などの樹脂製で、柔軟かつ軽量なため、折り畳みや持ち運びが容易で、屋内配電盤の作業などにも適しています。渡部工業の低圧用絶縁シートは厚さ0.6mmのPVC製で、軽量で扱いやすく、設置・撤収もスムーズに行えるのが特徴です。

300V以下用の絶縁シートは用途に応じて豊富に展開
交流300V・直流750V以下の低電圧向け絶縁シートでは、用途別の多彩なバリエーションが展開されています。例えば、低圧透明シートは作業対象を目視で確認しながら作業したい場合に最適です。また、現場のレイアウトに合わせて自由な大きさにカットできるマルチカットシートもあり、複雑な設備形状にも柔軟に対応できます。作業内容や設置場所に応じて最適な仕様を選ぶことで、使い勝手と安全性の両立が可能になります。
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高圧・低圧用絶縁シートは「型式検定品」が対象

高圧用(7,000V以下)および低圧用(600V以下)の絶縁シートは、独立したJIS規格こそ存在しませんが、「絶縁用保護具等の規格」に基づき厚生労働省の型式検定を受けた防具として扱われます。このため、労働安全衛生法のもとで6か月以内ごとの定期自主検査(耐電圧試験)が義務付けられています。
一方で、交流300V以下・直流750V用の絶縁シートは型式検定の対象外であり、同法による定期検査義務はありません。耐電圧試験の実施や記録管理といった手間が不要なため、日常点検だけで運用できる簡便さがあるのが特徴です。
【まとめ】絶縁シートを使って感電リスクを二重にブロック
絶縁シートは、電気作業における「充電電路に装着する防具」として、絶縁手袋などの保護具と併用することで感電リスクを二重にブロックします。高圧用・低圧用(600V以下用・300V以下用)と多様な製品があり、用途や電圧条件に応じて最適なものを選ぶことが重要です。渡部工業では用途別の絶縁シートを多数取り揃えており、現場の要件に応じた選定が可能です。
なお、感電対策は絶縁シートだけで完結するものではありません。絶縁手袋や絶縁長靴といった保護具との併用が不可欠です。それぞれの役割を正しく理解し、組み合わせて使用することで、より安全な作業環境を構築できます。