感電事故を防ぐために欠かせない絶縁手袋ですが、これから電路での作業を始める方の中には「本当に購入すべきだろうか?」と悩む方もいるでしょう。どんな種類を選び、どのくらいの期間使えるのか、定期検査は必要なのかなど疑問も多いはずです。本記事では、電気工事用手袋に関するよくある質問にQ&A形式で答え、正しい使い方もわかりやすく解説します。ぜひ購入前の参考にして、安全な作業の準備にお役立てください。
Q. 製品の耐用年数を教えてください

A. 渡部工業では、絶縁用手袋の交換目安は、未使用でも購入から約3年としています。ただし寿命は保管環境や使用状況によって大きく変動します。
- 直射日光(紫外線)や高温下で保管すると、未使用でもゴムが早く劣化します。
- 温度・湿度管理が行き届いた暗い場所で保管すれば、未使用品は3年以上性能を保つ場合もあります。
- 頻繁に使用すれば摩耗や劣化が進み、3年未満でも交換が必要になることもあります。
そのため、使用前には必ず手袋の外観や柔軟性を点検し、異常や劣化が見られたら使用年数に関わらず交換することが大切です。
Q. 一般的な作業用ゴム手袋で代用はできないの?

A. ゴムは本来ある程度の絶縁性を持つ素材ですが、一般的な作業用ゴム手袋は電気用として設計・検査されていないため、感電防止の性能は保証されません。
市販の作業用ゴム手袋はあくまで防汚やケガ防止を目的としており、耐電圧試験を経ていないため、電気工事で必要とされる規格上の絶縁性能を満たすことが確認されていません。見た目は似ていても「感電から命を守れるかどうか」という点で決定的な違いがあります。
実際に労働安全衛生法でも「絶縁用保護具」として型式検定を受けた手袋しか使用を認めていません。渡部工業の絶縁用ゴム手袋(例:低圧用507や高圧用530など)は、JIS T8112に適合し、耐電圧試験に合格した製品です。必ず専用の絶縁手袋を使用してください。
Q. 7kVを超える電圧帯(特別高圧)で使用できる手袋がほしい

A. 残念ながら国内規格では7kVを超える電圧に対応した絶縁手袋は存在しません。日本の労働安全衛生法に基づく絶縁用保護具の規格で定められた最大使用電圧が7,000Vまでだからです。
したがって、7kVを超える特別高圧の電路で作業する際は絶縁手袋で直接触れず、他の安全措置(活線作業用の絶縁棒を使う、送電を停止する等)を講じてください。現実的には国内で入手できる絶縁手袋の最高は7kVまでであり、それ以上の電圧では手袋による保護は想定されていない点に注意しましょう。
Q. 製品の耐熱温度を教えてください
A. ゴム製や樹脂製の絶縁手袋は、おおよそ60℃前後が安全に使用できる上限温度とされています。ただしこれは一般的な目安で、製品ごとに耐熱試験を行っているわけではありません。
それ以上の高温環境では素材が軟化・劣化する恐れがあるため、夏場に車内や直射日光下に放置するなど過度な高温状態は避けましょう。あくまで60℃程度が限界の目安と考え、極端な高温下での使用や保管はしないでください。
Q. 高圧ゴム手袋の「NU型」とはなんですか?


A. NU型とは、高圧用ゴム手袋の袖口(そでぐち)形状の一種で、肘の曲げ伸ばしに干渉しにくいデザインに改良されたタイプのことです。名前は開発当初の「New Uカット」という呼称に由来します。
従来は手の平側にU字型の切り込み(Uカット)が入った袖口が一般的でしたが、NU型ではこの切り欠き位置を掌に対して約60°ずらしています。それにより、肘を曲げた際に袖口が腕に当たりにくくなり、作業中でも手袋の袖が邪魔になりません。
Q. 高圧ゴム手袋に付属するパウダーの使い道を教えてください

A. 高圧ゴム手袋に付属するパウダーは、手袋内外の湿気を取るために使います。ゴム製品は水分を嫌うため、使用後や保管前にパウダーをまぶして余分な湿気を吸収させるのです。
特に作業中に雨や汗で手袋が濡れた場合は、布で水分を拭き取った後にパウダーを全体にはたいて乾燥させてください。付属のパウダーが切れた場合は、市販のベビーパウダー(滑石粉)で代用することもできます。パウダーを使うことは、手袋を清潔で乾燥した状態に保つことで劣化を防ぎ、安全に使い続けるための工夫です。
Q. 6カ月に一度行う定期検査は、いつから数えて6カ月なのでしょうか?
A. 定期検査の6カ月間隔は、手袋を実際に使い始めた日(使用開始日)から数えた6カ月です。購入日ではなく初めて使用した日を起点に半年ごとに検査することが求められます。
ただし、購入してから6カ月以上経って初めて使用する場合は、その使用前に一度検査を受けることが定められています。最初の使用日から6カ月ごとに定期検査を行い、未使用のまま長期間経った場合も安全のため使用前に検査しましょう。
Q. 定期検査の実施委託はできますか?
A. はい、絶縁手袋の定期検査を専門機関やメーカーに委託して実施してもらうことは可能です。多くの場合、メーカーが定期検査サービスを受け付けています。
例えば、購入したメーカーのオンライン窓口や専用フォームから検査を依頼し、手袋を送付すると、メーカー側で絶縁性能の試験(耐圧試験や外観検査など)を行って結果を報告してくれます。専門家に検査を任せることで、より確実に手袋の安全性を確認できるでしょう。なお、渡部工業でも自社製品に限り、定期検査の委託を受け付けております。お申し込みの詳しい手順は、下記よりご確認ください。
まとめ
絶縁手袋は電気工事における基本の安全装備です。本記事で寿命の目安や対応電圧、手袋の形状、お手入れ方法、定期検査について確認してきました。どれも安全に直結する重要なポイントです。
適切なタイミングで交換し、使用後はパウダーで乾燥させ、法定の検査を欠かさず受けることで、絶縁手袋を安心して使い続けられます。正しい装備と知識を身につけて、安全第一で電気工事に臨みましょう。