絶縁手袋を安全に使うには、購入後の「点検」が欠かせません。見た目に異常がなくても、素材が劣化していたり、破損に気づかず使用すれば重大な感電事故につながります。本記事では、使用前の簡易点検から半年ごとの定期自主検査まで、正しい点検方法を詳しく解説。購入後すぐに知っておくべき情報を、実践的にまとめました。
目次
絶縁手袋を安全に使うための点検方法を総ざらい

絶縁手袋を安全に使い続けるには、使用前点検と定期自主検査の2つの点検を行うことが不可欠です。日常的に行う使用前点検は作業者自身が実施するもので、簡易でありながら効果的です。一方、定期自主検査は法令で義務付けられており、半年ごとの実施が必要です。この2つを正しく行うことで、製品の安全性を維持できます。
使用前に必ず行う日常点検のポイント
作業前には必ず手袋の状態を確認しましょう。日常点検では、破れやひび割れといった外観の異常や、空気漏れがないかを調べる空気圧試験を行います。これにより、安全性を損なう重大な不具合を早期に発見できます。人間の手と目による点検ですが、命を守るうえで極めて重要な作業のため、使用者への実施周知を徹底しましょう。
半年ごとに実施が原則!定期自主検査の概要と流れ
絶縁手袋が厚生労働省の型式検定品である場合、法令により「6ヶ月以内に1回以上」の定期検査が義務付けられています(但し、購入後6ヶ月を超える期間使用しなかった場合は、使用する前に検査する必要があります。最後の使用から6ヶ月以上経過している場合も同様)。労働安全衛生規則で定められた電圧を製品に印加することで絶縁性能を検査する点が、使用前点検と大きく異なります。また、使用前点検は多くが使用する作業者本人が行いますが、定期自主検査は第三者または社内技術者が実施することが多いと言えます。
使用前点検の具体的手順と合否基準
使用前点検では、破損や劣化を見逃さないことが何より重要です。特に指先や指股、胴脇といった部分に注目し、状態を細かく確認します。点検の結果に応じて合否を判断し、不良品は確実に処分する必要があります。点検を習慣化することで、安全性を高いレベルで維持できます。
空気圧試験で重大な破損を発見


空気圧試験は、絶縁手袋に空気を入れ、漏れの有無を調べる方法です。穴が開いていると、空気が「シューッ」と漏れる音がするため、破損を視覚ではなく聴覚で把握できます。特に小さな穴や裂け目は見た目では分かりにくいため、この試験は非常に有効です。現場でも手軽に実施できるため、使用前点検に必ず取り入れるべきです。
外観検査で危険サインを見抜くコツ
外観検査では、素材の劣化や構造上の傷みを目視で確認します。とくに確認が必要なのは、摩耗しやすい指先・指股、自重のかかりやすい胴脇などです。
重点的に確認すべき部位
- 指先(対象物に触れるためキズ等がつきやすい)
- 指股(特に親指と人差し指の間の摩耗痕などをチェック)
- 胴脇(テンションがかかりやすくクラックが入りやすい)
- 手の平全体
- 色の変化・ベタつき・硬化などの素材劣化
つまんで白化していないか、ひび割れがないか、ベタつきや変色、硬化などの兆候があれば要注意。異常があれば、使用を即中止しましょう。
不良判定後は確実なマーキング・廃棄を!
点検で不良と判定された手袋は、再使用を完全に防止する必要があります。
主な処置方法:
- 「不良」と明記したタグを付ける
- 油性マジック等で目立つようにマーキングする
- 鋏で切って物理的に使用不可にする
- 廃棄用ボックスに速やかに投入する
これらの対応を徹底することで、現場での誤使用リスクを防ぐことができます。
定期自主検査の実施手順と評価ポイント


定期自主検査はJIS T8010に基づく耐電圧試験や、専門担当者による外観検査が基本です。耐電圧検査は、目視では把握できない製品の劣化を「電気」が代わりに発見してくれる優れた検査方法です。必要に応じて、一定年数で交換する計画的な管理も含めて、総合的な評価が求められるのが定期自主検査です。
目視では判定できない異常を発見する耐電圧検査
耐電圧検査では、手袋に高電圧をかけて絶縁破壊の有無を確認します。JIS T8010に準拠した水中試験が主流で、水を電極の一部として活用します。電圧破壊を起こさなくても漏れ電流が異常に高い場合は、汚れなど導電物の付着や材質そのものの劣化が疑われます。試験前にしっかりと拭き取る、また雨天作業をした手袋はよく乾かしてから試験を行うことで、正確な判定が可能になります。
印加電圧の基準:
使用電圧範囲 | 印加電圧(交流) | 試験時間 |
---|---|---|
交流300V超〜600V以下 | 1,500V | 1分 |
交流600V超〜3500V以下 または 直流750V超〜3500V以下 | 6,000V | 1分 |
3500V超 | 10,000V | 1分 |
定期自主検査でも外観検査は必須
定期検査では、機器による検査だけでなく人の目による確認も欠かせません。ひび割れや変色など、「電圧破壊を起こすほどではないが危険な兆候」は目視でないと発見できないからです。耐電圧検査に合格しても、外観に異常があれば不合格とします。耐電圧検査は優れた試験方法ですが、決してそれだけに頼らないという姿勢が重要です。
耐用年数による計画交換で安全性を最大化
定期自主検査を実施しつつ、あらかじめ定めた年数で交換する「計画交換方式」も選択肢のひとつです。この方法では、一定の検査負担軽減ができ、また新しい製品を使用することで高い安全性を維持できます。法的な耐用年数の規定はありませんが、渡部工業では3年を目安に交換を推奨しています。
検査結果の記録保存と合格印の押印ルール
定期自主検査の結果(試験成績書)は、法令で3年間の保存が義務付けられています。さらに、手袋本体には「合格印」を押印し、成績書との突合せ確認ができるようにします。この2つがそろって初めて、正しく検査を受けた証明になります。外部業者に委託した場合は、返却された製品と成績書を突き合わせて確認することも忘れずに行いましょう。
渡部工業製品ならメーカーに検査委託ができる
渡部工業では、自社製品の定期検査を受託しています。JIS T8010に準拠した試験設備を備え、専門技術者が外観・耐電圧の両面から適正に評価します。絶縁手袋のプロフェッショナルであるメーカーによる検査なら、試験成績書の発行や合格印の押印など、確実な記録管理が可能です。検査の手間や不安を減らしたい方は、メーカー委託を活用してください。
まとめ|確実な点検で絶縁手袋の安全を守ろう

絶縁手袋は、作業前の簡易点検と半年ごとの定期検査の両輪で安全性を維持します。使用前の空気圧試験と外観確認は、作業者が日常的に行える重要な習慣です。一方で定期自主検査では、目視だけでなく電気的な性能評価が求められます。管理の手間を省くなら、計画交換やメーカーへの検査委託も現実的な選択肢です。感電事故を未然に防ぐため、正しい点検手順を理解し、安全な作業環境を確保しましょう。